ホーム > 相続・贈与 > 贈与税の基礎理解 使えない「相続時精算課税制度」

贈与税の基礎理解 使えない「相続時精算課税制度」

(写真=PIXTA)

相続対策には様々ありますが、1つに生前贈与を行って資産を相続人に先に移転するという手法があります。そこで、今回は贈与、中でも馴染みの薄い「相続時精算課税制度」にフォーカスして、その内容に迫ります。

贈与税って相続税法と関係あるの?

そもそも贈与税というのは何の法律で定められているかご存じでしょうか。「贈与税法」というものがありません。贈与税というのは、実は相続税法の中で定めらえている「おまけ」のような税なのです。

贈与税の目的が、生前贈与による相続税回避の防止のため、相続税の補完的な税の性質を持つことから相続税法の中で相続税とともに規定されたと言う訳です。ここでも贈与は「相続税回避の防止」という位置づけに着目すると、裏を返せばやはり贈与が相続税対策に一番インパクトがあるということです。

相続時精算課税制度は、贈与税の中で控除額が定められている1つの制度です。相続税法の中で控除額が定められているものは5つあります。

1つ目は暦年贈与に用いられる基礎控除。2つ目は居住用財産の配偶者控除。3つ目は住宅取得等資金の贈与。4つ目は教育資金の一括贈与。そして最後に5つ目が相続時精算課税による贈与です。

2015年改正のポイント

厳しくなったと言われる改正相続税法において、相続時精算課税については、一部の緩和改正が行われました。従来から相続時精算課税は贈与者と受贈者に年齢制限があった。贈与者は2014年まで65歳以上でしたが、2015年1月より60歳まで引き下げられました。受贈者も直系卑属のうち20歳以上の者であったが2015年1月より20歳以上の孫も含まれるようになったのです。

相続税は強化されましたが、贈与税は緩和されています。これは全人口の43%を占める60歳以上の人達が日本の金融資産の約60%を保有しているという背景があります。相続税の税収は増やしたいものの、一方で若い世代に資産を移し、もっと個人消費を増やしたいという思惑があるのです。政策担当者の苦悩が感じられる改正だったといえるでしょう。

相続時精算課税のメリット

相続時精算課税とは、贈与者から贈与された財産について、その額から2,500万の特別控除額を差し引いた残額に一律20%の税率で課税される贈与税です。この2,500万円の控除額は上述の5つの制度の中で一番大きな額です。

そのため一度に多額の資産が贈与でき、資産移転がスムーズにできるのが最大のメリットです。暦年贈与の基礎控除額は年間110万円までなので、暦年贈与で23年分の効果を一気に発揮できると思えばかなりの効果です。相続時精算課税については、寿命が残り少なく、多額の現金を持っているような人であれば、効果を発揮できます。

悩ましい適用

この相続時精算課税ですが、使い勝手が悪く、実は利用率が低いようです。

贈与というと、基礎控除が毎年110万円の暦年贈与の方が一般的で、一旦、相続時精算課税を選んでしまうと、暦年贈与に変更できないという制約があります。これは、ある程度若いうちから相続対策を始める人にとっては、あまり響かないでしょう。若い被相続人の場合、本人の生活もあるため、一度に2,500万円も資産を贈与するよりは、自分の貯蓄も残しながら暦年贈与を選択する方が現実的だからです。

小規模宅地等の減額の特例も併用して適用することができません。小規模宅地等の特例は330平方メートルまでの自宅の敷地であれば8割減の評価が可能です。3,125万円以上の土地であれば小規模宅地等の減額特例を適用した方が有利です。例えば、3,200万円の土地であれば、8割控除されるため2,560万円まで控除でき、小規模宅地等の減額特例を適用したほうが有利です。

こうしたことからか、世間で言われる相続税対策の中には相続時精算課税を使ったテクニックはほとんど出てきません。ただ相続対策に出遅れてしまった人達は、一度検討してみてもいいかもしれません。

>>【無料】いますぐプライベートFPに相談してみる

【オススメ記事】
なぜ教育にお金をかけると収入が増えるのか?
お金持ちはどこへ?なぜ日本の富裕層が都会に移動しているのか
日本でも本格化する「プライベートバンク」 の存在 普通の銀行と何が違うのか
加速する富裕層の海外移住 海外に目を向けた節税対策を!
贈与税の基礎理解 使えない「相続時精算課税制度」